釣具屋さんと僕

  • スマホ上の空論
  • 平山 紘介 コウスケさん

「売り出し方をつくるコーチング」

 

心の解説者®︎ 平山です。

 

太東漁港

通いなれた海沿いの道を車で走る。
20代からサーフィンをはじめて
何度も走った30号線。

千葉のサーフポイントは海岸沿いの
北部をはじめ南部にまで広がる。
初心者向きなビーチからプロ向き、
ロングボード向きまで
数多くのサーフポイントが存在する。

サーフィンは夏だけでなく
冬もできるスポーツだ。
だから夏だけでなく1年中この道を
僕は通っていた。
そして、それだけ通っていたにも関わらず
全く上達しない僕のサーフィンもひどいものだ(笑

ある高波の日に波を軽減できる
太東ポイントへ僕は向かった。
ビーチの波は低いものの、風が合わないせいで
海面がぐしゃぐしゃだった。
「これじゃできないし、御宿じゃ波ないし
一宮は力量オーバーだし・・どうしよう」
と女友達ヤスとぼやいていた。

ヤスは「こうすけ一宮入りなよ!私見てるから!!」
と、入りたくない僕の心境を知りながら適当なことをいつもいう。
「一宮は無理だよ、かといって太東も海面が悪いし」
するとヤスは言う。
「釣りしよーよ!堤防のところで!」
「オレ釣りしたこともないし、道具もないじゃん!」
と返した。
「太東の入り口にある釣具屋さんで買ってきてよ!」
とまた思ってもないことを平気で放つヤス。

でも、確かに釣りをしてみたいのもある。
僕は近くに車を止めて堀込釣具店に入った。

店内には大きな竿が綺麗に並び、
入って右側には生き餌が何種類も陳列されている。
店主?のおじいさんがぬらりと出てきた。
「すみません釣り竿ください!」
素直なバカなのか?しっかり僕はじいさんに話しかけた。
「あーその中古はベテラン用だから、その辺のにしな」
中央に集まる小さな釣り竿の中から選び
「じゃあこれください」と僕は竿を渡した。
「これ竹竿。たけざおじゃザリガニくらいしか釣れねーよ」
と僕はリールのない竿を選んでしまった。

「お前さん餌は何にすんの?」
「え?餌ですか?」
「餌は何がいいんですか?」と僕は尋ね返した。
「何が釣りたいんだよ?」
おじいさんのこの言葉で僕は自覚をした。
本当に釣り竿を買いに来ただけで、
何を釣るのかさえ考えていなかった己のアホさを・・
「何釣りたいか決めてからまたおいで」
と、おじいさんは、無理スレスレの優しい言葉を僕にくれた(笑

漁港においた車に僕は戻った。
ヤスはスマホをいじりながらくつろいでいる。
「買ってきたの〜?」
「ううん。何釣るか決めてから買い物しなって・・」
一部始終をヤスに話した。
「笑、笑、ザリガニって海にいないし!
伊勢海老はいるけど密漁だし笑」
ヤスはいつもの明るさで満足していた。

車のギアをドライブに変える。
「時間もったいないし片貝新堤まで戻らない?」
とヤスに話しかけた。
「いーよー」と言いながらスマホを見るヤス。
30号線を上りながら
僕は、おじいさんとのやりとりを思い返した。

確かにライブに行きたいって言う人がいて、
「行きたい、行きたい!」と言われても
「何のライブ?」
と聞かれたら「何がいいですか?」じゃ
誰も応えられないよね(笑
僕は走りなれた30号線を走りながら
全部中途半端な自分に恥ずかしくなった。

 

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心の解説者®︎・構成ライター 平山 コウスケ

 

 

 

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